第135回地方会抄録
プログラムは会員頁に移動しました (ID、パスワードは10月中旬に発送予定の抄録集をご覧下さい。11月からご利用いただける予定です。)
(1-3)9:30-10:00 座長 白井 眞美(磐田市立総合病院 小児科)
1 ESBL産生大腸菌の垂直感染により死亡した新生児敗血症の一例
静岡県立こども病院 新生児科
○児玉洋平(こだま ようへい)、佐藤早苗、水谷真一郎、後藤孝匡、廣瀬彬、浅沼賀洋、野上勝司、中澤祐介、伴由布子、古田千左子、長澤真由美、中野玲二、田中靖彦
子宮内感染症を疑い緊急帝王切開で出生。在胎25週5日、出生体重1111g。出生時より呼吸循環不全を認めた。先天性感染症を疑い、ABPC、AMK、γ-globulinを投与開始した。日齢1に入院時血液培養からグラム陰性桿菌が検出された。耐性菌の可能性を考えMEPMを追加したが、改善なく同日死亡した。死亡後に入院時の児の血液培養および母体の頸管培養からESBL産生大腸菌が検出同定された。
2 出生後gradeⅣ先天性水腎症と診断された一例(胎児エコーの観点から)
静岡赤十字病院 小児科
○竹森千晃(たけもり ちあき)、伊藤淳平、大河原一郎、西田光宏、西澤和倫
胎児水腎症は出生前胎児エコーで発見される頻度の高い疾患であるが正常な胎児でも生理的に軽度な腎盂・尿管拡張を示すため、胎児エコーのみでは病的意義の判断がつきにくい。今回、妊娠35週時に指摘され、経過観察されたのち、妊娠36週時に水腎症gradeⅣ(SFU分類)および水尿管症と診断され、39週3100gで出生した症例を経験したので、その後の経過を含め文献的考察を交えて発表する。
3 エンドトキシンショックを呈した乳児早期発熱の1例
静岡済生会総合病院 小児科
○小松和幸(こまつ かずゆき)、林賢、小松賢司、水谷真一郎、佐藤恵、森下雄大、杉浦崇浩、福岡哲哉
症例は1ヶ月男児。第1病日の早朝に不機嫌と発熱を認め入院となった。入院時採血では炎症反応は上昇していなかった。入院時にABPC静注し、1時間後にショック状態となり直ちに呼吸・循環管理を行い、第2病日に改善傾向となった。
第2病日での血液検査にてCRP 22.0mg/dL、PCT 186.7ng/mLであり、尿培養からE.coliが検出され血中エンドトキシン133pg/mLと高値であったこと、VCUGにてVUR Ⅳ度を認めたことから尿路感染症によるエンドトキシンショックと診断した。
(4-7)10:00-10:40 座長 中島 信一(浜松医科大学 小児科)
4 胎児超音波検査で四肢短縮を指摘され、出生後に耳・脊椎・巨大骨端異形成症が疑われた骨系統疾患の一例
順天堂大学医学部附属静岡病院新生児センター
○浅古孝太郎(あさこ こうたろう)、田中登、田中紗季、水谷亮、鳥羽山寿子、幾瀬圭、大川夏紀、寒竹正人
在胎37週2日、2352gで出生。生後、四肢短縮、顔面正中部低形成、軟口蓋裂、X線でベル型の胸郭、肘、膝の巨大骨端、長管骨のダンベル様変形、扁平椎体を認めた。両側脳室拡大を認め、ABRは両側反応なしであった。現在、耳・脊椎・巨大骨端異形成症を疑い遺伝子検査を行っている。本疾患はコラーゲン11A遺伝子変異が原因であり、難聴や口蓋裂、進行性の関節拘縮を合併するため、早期に診断し各科と連携していくことが重要である。
5 体重増加不良の精査から生後8か月でpycnodysostosisの診断に至った一例
静岡県立こども病院 救急総合診療科1)、 放射線科2)
○原周平(はら しゅうへい)1)、荘司貴代1)、平岡聡1)、山内豊浩1)、関根裕司1)、唐木克二1)、勝又元1)、熊崎香織1)、加藤寛幸1) 、小山雅司2)
pycnodysostosisは常染色体劣性遺伝の骨系統疾患であり、歩行開始後の骨折で気づかれることが多い。症例は生後7か月男児で、哺乳不良と体重増加不良(-2.4SD)の精査目的で入院した。各疾患の鑑別を進める中で、胸部レントゲンで肋骨のオール様変形・骨陰影濃化所見を認めた。また、大泉門の開大と縫合線の離解・末節骨の融解像・全身の骨陰影濃化所見を認めpycnodysostosisと診断した。乳幼児の体重増加不良では骨系統疾患も鑑別の一つとなりうる。
6 9か月で診断したSilver-Russel症候群の1例~早期確定診断の意義について~
静岡市立清水病院小児科
○石井憲行(いしい のりゆき)、 塚越麗 、田口寛子 、本間麻里 、明貝路子、 上牧務
重度の子宮内発育遅延、相対的大頭、下肢の脚長差等の典型的な臨床症状を呈しH19-DMRの低メチル化を認め9か月でSilver-Russel症候群(以下本症)の確定診断に至った。本症は、他のSGAに比し成長ホルモン治療の効果不良、BMIの持続低値となることが問題とされている。SGAから本症を確定診断することはこれらの臨床経過を早期に家族と共有することができ包括的な治療を行う上で重要である。
7 当院で経験したFanconi貧血の2例
聖隷浜松病院小児科
○村上知隆(むらかみ ともたか)、松林正、藤田直也、大呂陽一郎、横田卓也、山本雅紀、深山雄大、大前隆志
Fanconi貧血はDNA架橋剤高感受性の染色体不安定性を特徴とする遺伝性疾患である。①汎血球減少、②皮膚の色素沈着、③身体奇形、④低身長、⑤性腺機能不全を伴うとされているがその表現形は多様である。
今回われわれはFanconi貧血の2例(同種骨髄移植を施行した8歳男児・新生児期発症で同種骨髄移植予定の1歳女児)を経験したので報告する。
(8-10)10:40-11:10 座長 藤澤 泰子(浜松医科大学 小児科)
8 新生児マススクリーニング採血の精度管理 ー我々の施設での取り組みー
静岡市立静岡病院 小児科
○五十嵐健康(いがらし たけやす) 、酒井秀政
静岡県では、2013年10月以降タンデムマス導入による拡大新生児マス・スクリーニングが行われている。当施設では、小児科入院中の新生児と院内出生の正常新生児について採血を行っているが、2014年4月以降検体不良による再採血が急増した。このため、県予防医学協会と連絡をとり、採血法の見直しを含め精度管理の向上に取り組んだ。以上の経緯と改善の要点(二度づけを避けること等)、また問題点(適切な採血法の選択等)について報告する。
9 乳児期に高コレステロール血症を来した一症例
藤枝市立総合病院 小児科
○藤澤佑介(ふじさわ ゆうすけ) 宇佐見敦子 八木洋子 森貴幸 斉藤祐 朝倉功 伊東充宏
母体バセドウ病のため経過観察中、甲状腺機能が正常であるにもかかわらず総コレステロールが著明な高値を示した8ヶ月女児の症例を経験した。精査で糖原病、ネフローゼ症候群、遺伝性の高コレステロール血症などは否定的であり、適切な栄養指導によってその後改善が見られたことから、栄養不良による高コレステロール血症と考えた。乳児において高コレステロール血症を来す疾患とその鑑別に関し、文献的考察を交えて報告する。
10 先天性甲状腺機能低下症加療中に偽性副甲状腺機能低下症と診断された6歳女児
中東遠総合医療センター小児科1)、国立成育医療研究センター分子内分泌研究部2)
○佐野伸一朗(さの しんいちろう)1)2)、西尾友宏1)、矢田宗一郎1)、久保田登志子1)、水野義仁1)
新生児MSで先天性甲状腺機能低下症と診断され外来通院されていた。6才時に内分泌外来にコンサルトあり。乳児期肥満傾向、発達遅滞あり、斜視、歯列不整、手関節屈曲制限を認めた。偽性副甲状腺機能低下症 (PHP) を疑い精査にてPTH抵抗性(Ca 7.9 mg/dl, P 6.7 mg/dl, iPTH 1538 pg/ml)を認めPHP-Iaと診断した。本症発見のキーワードはいくつかあり我々の研究データを加えて発表する。
(11-13)11:10-11:40 座長 伊藤 政孝(青葉こどもクリニック)
11 気道感染症児の鼻咽頭から分離された肺炎球菌の検討
浜松医療センター小児科
○高柳文貴(たかやなぎ ふみたか)、黒田喜代子、坂井聡、中村雅博、宮本健、矢島周平、西田光宏
当科では2012年1月から浜松市保健環境研究所の協力を得て、気道感染症で入院した小児の鼻咽頭から分離された肺炎球菌の解析を行っている。血清型が判明した約150株を対象に、血清型と予防接種や集団保育との関連性などを検討したので報告する。
12 マイコプラズマ抗原迅速検査キットの有用性の検討
静岡小児感染症サーベイランス研究会1)、静岡市立清水病院小児科2)、JA静岡厚生連 静岡厚生病院小児科3)、藤枝市立総合病院小児科4)、磐田市立総合病院小児科5)、聖隷浜松病院小児科6)
〇明貝路子(みょうかい みちこ)1)2)、田中敏博1)3)、斎藤祐1)4)、伊東充宏1)4)、白井眞美1)5)、松林正1)6)
2013年に上梓されたマイコプラズマ抗原迅速検査キット2製品の有用性を調べる目的で多施設共同研究を実施した。鼻咽腔吸引液を用い、PCR法を基準に迅速検査キット2製品、LAMP法の結果を比較した。135検体を解析した段階では、リボテスト®、プライムチェック®、LAMP法の感度/特異度は各々16.7%/99.1%、61.1%/89.7%、77.8%/100%であった。解析数を増やした結果を報告する。
13 アンケートと受診患児からみた水痘ワクチン単回接種の評価
キッズクリニックさの
○佐野 正(さの ただし)
3-15歳の当院受診児513名を対象に、水痘罹患とワクチン歴についてアンケートを行った。結果はワクチン単回接種のbreakthrough(BT)率は23.5%、有効率は64.4%であった。また、最近2年間に受診した水痘患児196例の検討では、未接種91例/単回接種105例(中央値3.3歳/4.9歳)と接種例が半数を超えた。BT水痘例は大半が軽症だったが、接種後5年以上経過のBT例では重症児も存在した。ワクチン二回接種の必要性を強調したい。
(14-16)11:40-12:10 座長 村山 恵子(げんきこどもクリニック)
14 心電図RR間隔変動係数(CVRR)と気分障害の関係
掛川 いけや医院
○池谷満(いけや みつる)
CVRRは従来糖尿病患者の自律神経障害の有無を調べる検査として用いられてきた。しかし経験的に、不安・緊張で上昇、滅入ると低下し、上昇低下は睡眠導入剤・SSRI・安定剤などからその単独投与で正常化することが演者により成人例で確認されてきた。小児でも同様の傾向があり、同年齢平均値より上昇をみた場合は「何が不安なの?」低下をみた場合には「何で参ったの?」の言葉を使っての問診が勧められた。
15 浜松市内診療所の小児在宅医療への関わり実態調査
浜松市発達医療総合福祉センター友愛のさと診療所
○遠藤雄策(えんどう ゆうさく) 鈴木輝彦 平野浩一
近年、医療的ニーズが高いまま在宅移行する小児は増加傾向にある。在宅医療管理は総合病院が主体であり、成人と異なり一般診療所の関わりは少ない。2011年度に浜松市内523の医療機関に小児在宅医療に関する質問紙調査を行った。194件の回答があり、往診可能な診療所は16件(8.2%)、何らかの医療的ケアに関われる診療所は22件(11.3%)であった。今年、範囲を広げ再調査を行い、受け皿の拡大を検討したい。
16 当院重症心身障害(重症)病棟に入院した乳幼児例について
国立病院機構静岡富士病院小児科
○安田寛二(やすだ かんじ)
過去12年間に当院重症病棟に入院(短期入所を除く)した満6歳以下の乳幼児34例(男18女16)について臨床的検討を行った。県外児が21例(65%)、基礎疾患は脳性麻痺15例、誤飲事故などによる脳障害3例、被虐待2名などで、入院時点での呼吸器管理7例、気管切開施行13例であった。転帰は地元の医療機関などへの転院17例、死亡3例、入院継続14例。家族背景が複雑で障害受容困難例が多かった。
休憩 12:10-13:10
(17-19)13:10―13:40 座長 田口 智英(浜松医科大学 小児科)
17 当院における川崎病の治療について
浜松医科大学小児科学教室1)、中東遠総合医療センター小児科2)
○岩島覚(いわしま さとる)1)、田口智英1)、石川貴充1)、安岡竜平1)、福家辰樹1)、佐野伸一朗2)
[はじめに]当院で治療された川崎病(KD)症例について後方視的検討し報告する。
[対象]KD107症例。[方法]1 line治療別に効果を検討。発症から1か月後の冠動脈径z score2.5以上の症例をCAL症例とした。 [結果]CALは23/107(21.5%)。 1 line治療別のCAL発生率はアスピリンのみ1/5例 IVIG単独 21/99, IVIG2+PSL 1/2で治療別の差を認めなかった。risk score別の検討でkobayashi scoreのHigh risk群で有意にCALを認めた(High risk,15/49 vs low risk 8/58, p=0.030)。
[まとめ] 1 line治療不応予測例に対する治療法について様々な検討が行われているが,総じてエビデンスレベルは低い。川崎病ガイドライン(平成24年度改訂版)に沿ったエビデンスの集積が必要である。
18 慢性特発性血小板減少性紫斑病の経過中に全身性エリテマトーデスと診断した1例
沼津市立病院 小児科
○吉田 圭(よしだ けい)、川口忠恭、木村かほり、福原淳示、村林督夫
12歳女子。紫斑を主訴に紹介受診した。血小板数9,000/μlと低値のため特発性血小板減少性紫斑病と診断した。免疫グロブリン投与で改善したが、その後も血小板数低下をきたし、ステロイド内服を要した。初診から約1年後に光線過敏症状を呈し、抗ds-DNA抗体陽性等から全身性エリテマトーデス(SLE)と診断した。血小板減少が遷延する症例ではSLEの可能性も念頭において診療する必要があると考えられた。
19 pH4処理酸性人免疫グロブリン製剤の血管外漏出により皮膚壊死をきたした川崎病の2乳児例
中東遠総合医療センター小児科
○西尾友宏(にしお ともひろ),水野義仁,久保田登志子,矢田宗一郎,佐野伸一朗
免疫グロブリン製剤はスルホ化製剤、PEG処理製剤、pH4処理製剤と分類される。川崎病の乳児で免疫グロブリンの血管外漏出により皮膚壊死・潰瘍を起こした症例の報告があったことから、2012年6月にpH4処理製剤の添付文書に “乳幼児への投与において血管外漏出に注意すること”の一文が加えられた。今回当院でもpH4処理製剤の血管外漏出により皮膚潰瘍を起こした川崎病乳児例を経験したため、pH4処理製剤の危険性を検討し報告する。
(20-23)13:40-14:20 座長 宮本 健(浜松医療センター 小児科)
20 急性中耳炎、乳突蜂巣炎からS状静脈洞血栓症を来たした4歳男児例
聖隷沼津病院 小児科
○内山弘基(うちやま ひろき)、漆畑怜、林泰壽、杉谷正浩、鶴井聡
症例は4歳男児。発熱と中耳炎のため入院した。中耳炎は改善傾向を示し、視診上も乳突蜂巣炎を疑う所見は見られなかったが、頭痛を訴えたため頭部MRIの撮影を施行し、乳突蜂巣炎とS状静脈洞血栓症が判明した。抗生剤投与、抗凝固療法、鼓膜チューブ留置を行い改善した。MRIにて1ヶ月後に血栓の縮小を、6ヶ月後に消失を確認した。中耳炎の診療の際には、静脈洞血栓症など頭蓋内病変の合併も考慮すべきである。
21 けいれん重積で発症し、救命できなかったカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)欠損症の1例
聖隷浜松病院小児科1)、埼玉県立小児医療センター総合診療科2)
○深山雄大(みやまゆうだい)1)、横田卓也1)、金子幸栄1)、西田大恭1)、大前隆志1)、山本雅紀1)、大呂陽一郎1)、藤田直也1)、松林正1)、窪田満2)
症例は生来健康な1歳1ヶ月の女児。けいれん重積発作のため当院に救急搬送された。救急外来で心肺停止となり死亡した。患児は6日前にけいれん重積発作と低血糖のため入院しており、姉が12年前に好酸球性心筋炎のため死亡していた。新生児期の濾紙血でタンデムマス検査を施行し、最終的にCPT2欠損症と診断した。稀な疾患だが、新生児期または入院時に診断できていれば防げた死と思われ、教訓となる症例であり報告する。
22 2相性脳症の1例
静岡済生会総合病院 小児科
○小松賢司(こまつけんじ)、小松和幸、水谷真一郎、佐藤恵、森下雄大、杉浦崇浩、福岡哲哉
二相性脳症を経験したので報告する。1歳4ヶ月男児。初回、発熱時けいれん後、意識清明も右不全麻痺あり。解熱後、第6病日に右方偏視・右上肢から始まる二次性全般化発作のclustering認め、CBZ 5mg/kgにてけいれん頓挫。ステロイド・マンニトール投与。MRI拡散強調画像にてbright tree appearanc、脳波では全般性の高振幅徐波を認めた。一時、右上肢固縮、座位不安定、発語認めなかったが、徐々に回復、発症3ヶ月時点で年齢相当の発達をしている。
23 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が考えられ頻回のステロイドパルス療法を要した一例
聖隷三方原病院 小児科
○今市悠太郎(いまいちゆうたろう)、吉田悟、野村武雅、吉村歩、側島健宏、白井憲司、南野初香、元重京子、木部哲也、横地健治
特に既往のない8歳男児。発熱・感冒症状に続発して精神神経症状・呂律障害が出現し当科紹介受診。頭部MRI:左前頭葉中心に深部白質にFLAIRで高信号病変が散在。脳波:覚醒時に左高振幅徐波あり。症状は速やかに改善したが画像異常が遷延し、メチルプレドニゾロンパルス療法3クール施行後にプレドニゾロン錠内服開始し漸減終了した。経過から急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と考えられた。外来で経過観察を継続している。
(24-27)14:20-15:00 座長 山本 雅紀(聖隷浜松病院 小児科)
24 安倍川花火大会で発生したO-157によるHUS 5症例の検討
静岡県立こども病院 後期研修医1) 腎臓内科2)
○塩田 勉(しおだ つとむ)1) 、村田 乃理子2) 、鵜野 裕一2) 、山田 昌由2) 、北山 浩嗣2) 、和田 尚弘2)
7月に市内で行われた安倍川花火大会において、O-157による集団食中毒が発生した。感染者は数百人に及び、小児の発生も多数を占めた。HUS(溶血性尿毒症症候群)を発症し、当院にて入院加療を行った症例は5例であり、うち2例は透析治療を行った。それぞれの経過を報告するとともに、今回のHUS 症例の特徴について、過去の事例と比較を行い、考察する。
25 当院において診断に至った急性巣状性細菌性腎炎(AFBN)の7例
磐田市立総合病院小児科
○深田充輝(ふかだ あつき)、渡部達、松田智香、金城健一、増永陽平、平野恵子、白井眞美、遠藤彰、本郷輝明
急性巣状性細菌性腎炎 (acute focal bacterial nephritis:AFBN)は急性腎孟腎炎の重症亜型で、腎臓超音波検査や造影CT検査で充実性腫瘤状病変を呈する。また、尿所見を欠く不明熱の精査で腎臓の画像所見から診断にいたる場合もある。当院で経験した症例も7例中4例が尿中白血球陰性、尿培養陰性であった。AFBNは予後良好な疾患であるが、早期診断・治療が重要であり、今回当院で経験した7例のAFBN患児について報告、比較検討する。
26 急性巣状細菌性腎炎(AFBN)の一例
順天堂大学医学部附属静岡病院小児科
◯齊藤真人(さいとう まさひと)、磯武史、富田理、馬場洋介、千葉幸英、有井直人、寒竹正人
3歳男児。発熱、幻視を主訴に受診しWBC 17,000/μL、CRP 15.3mg/dL、精査加療目的に入院とした。髄液を含む各種培養検査、頭部MRI等施行し、菌血症の疑い及び熱せん妄として加療したが、入院2日目より腰背部痛あり、腹部造影CTで左腎実質内に不均一な低吸収域を認め、急性巣状細菌性腎炎と診断した。加療で症状消失し再燃なく、抗菌薬を計21日間投与し退院とした。経過と文献的考察を交え報告する。
27 心不全を契機に診断された腎外症候性急性糸球体腎炎の1例
○相良長俊(さがら ながとし)、久保田淳、石川尊士、日馬由貴、山田浩介、秋山直枝、千葉博胤、瀬川孝昭
富士市立中央病院 小児科
井田博幸 東京慈恵会医科大学小児科
症例は生来健康な11歳男児。眼瞼浮腫と呼吸困難感を主訴に近医受診し、心エコーで僧房弁閉鎖不全と左房拡大を認め、当科紹介となった。5kgの体重増加と著明な浮腫を認め、血圧178/108mmHgと高値であった。入院後は乏尿なく、尿所見も軽微であったが、咽頭からA群溶連菌が検出され、補体低値であったことから、腎外症候性急性糸球体腎炎と診断した。本症例に若干の文献的考察を加えて報告する。
休憩 15:00-15:05
(28-31)15:05-15:45 座長 久保田 晃(菊川市立総合病院 小児科)
28 淋菌性結膜炎の4ヵ月女児例
浜松医療センター 小児科1)、同眼科2)
○武内宏樹(たけうち ひろき)1)、坂井聡1)、高柳文貴1)、中村雅博1)、黒田喜代子1)、宮本健1)、矢島周平1)、西田光宏1)、田邊芳樹2)
症例は4か月の女児。第一病日より眼脂、第二病日より眼瞼の腫脹と発赤出現し、近医眼科受診、細菌性結膜炎と診断された。同日より発熱出現し、近医小児科受診後当院紹介、入院となった。入院時眼脂を多量に認め、開眼困難・眼瞼浮腫を強く認めた。眼科受診を行ったところ、淋菌性結膜炎が強く疑われ、眼脂のグラム染色でも淋菌と考えられる菌が検出された。淋菌性結膜炎は貴重な症例と考えたため、文献的考察を加えて報告する。
29 バングラディッシュで治療開始された結核性髄膜炎の1男児例
聖隷三方原病院小児科
○南野初香(みなみの はつか)、今市悠太郎、吉田悟、野村武雅、吉村歩、側島健宏、白井憲司、元重京子、木部哲也
出生後日本に在住し、6歳でバングラディッシュに移住した9歳男児。BCG済。発熱、頭痛、嘔吐、右内斜視を認め近医を受診、髄液検査とツベルクリン反応陽性で結核性髄膜炎と診断し、INH+RFP+PZA+SMによる治療が開始された。歩行障害、言語障害、視力障害を認めていたが次第に改善した。発症2ヶ月後に日本での治療を希望して当院受診、日本結核予防法に従って内服治療を継続している。文献的考察を加え報告する。
30 皮膚リンパ節ノカルジア症の一例
○太田英仁(おおた ひでひと)、小川陽介、三谷友一、八鍬瑛子、中釜悠、増井礼子、柳澤敦広、稲冨淳 焼津市立総合病院 小児科
吉成康 焼津市立総合病院 皮膚科
症例は6歳女児。3週前に左膝を受傷し、一旦治癒したが小膿疱が残存した。3日前から発熱・左鼠径部リンパ節腫脹を呈し、内服加療に抵抗性のため当科紹介となった。入院時、左膝膿皮症と左鼠径部リンパ節腫脹を認めた。抗生剤静注開始後徐々に改善したが、創からNocardiaが培養され、ST合剤に変更した。Nocardia感染症は免疫不全者に多いが、一部健常者でも皮膚リンパ節型感染を呈すると言われている。文献的考察を加え、報告する。
31 当科における鼠径部リンパ節炎の検討
静岡県立総合病院 小児科
○原崎正士(はらざき まさし)、佐藤琢史、田中大喜
2010年4月から2014年3月の4年間において当科で経験した鼠径部リンパ節炎の8例について後方視的に検討した。全例に対して抗菌薬を投与、3例で入院加療を必要とし、3例で外科的処置を必要とした。全例治癒したが2例で再発を認めた。原因微生物が判明した3例のうち、2例が黄色ブドウ球菌、1例がA群連鎖球菌であった。
(32-34)15:45-16:15 座長 岩島 覚(浜松医科大学 小児科)
32 臍ヘルニア嵌頓の一例
天竜こども医院
○太田邦明(おおた くにあき)
まれな頻度でしかみられない臍ヘルニア嵌頓の7か月男児例を経験した。嘔吐、不機嫌で発症し、来院時の臍部の膨隆は約3cm径で、皮膚の色調等に変化なく、圧痛もなかった。超音波検査で膨隆部内の腸管は拡張し、乏血性も疑われた。用手整復を試みたが完全には還納できず、紹介先の小児外科医により整復され、後日根治術が施行された。近年圧迫固定療法を行う施設が増加している。県内の小児外科医の意見も調査し発表の予定。
33 Marfan症候群の3歳7か月女児に認められた急性胃短軸捻転症
磐田市立総合病院 小児科1)、同 臨床検査技術科2)、同 小児外科3)
○高塚大輝(たかつか だいき)1)、渡部達1)、大井直樹2)、松田智香1)、金城健一1)、増永陽平1)、平野恵子1)、白井眞美1)、遠藤彰1)、本郷輝明1)、後藤圭吾3)
症例は3歳7か月女児で主訴は発熱、嘔吐であった。腹部超音波検査で骨盤腔まで胃が拡張している所見を認め、直ちに造影CT検査を行った。幽門が噴門の左頭側・腹側に位置し、急性胃短軸捻転症と診断し、緊急で捻転解除手術が施行された。術後経過は良好で1週間で退院となった。身体所見と家族歴からMarfan症候群と診断した。嘔吐を呈する疾患の1つに急性胃軸捻転症を考慮する必要がある。
34 頻拍誘発性心筋症を呈した間欠型WPW症候群の1乳児例
静岡県立こども病院循環器科
○佐藤慶介(さとう けいすけ)、土井悠司、鬼頭真知子、松尾久美代、三浦慎也、櫨木大祐、芳本潤、金成海、満下紀恵、新居正基、小野安生
症例は1か月男児、数日来の哺乳不良と嘔吐を主訴に来院。頻拍があり、心電図で上室性頻拍を認め、ATPを投与したところ頓挫。経過観察目的で入院となったが、EF=44%と心機能低下を認め、房室回帰性頻拍による頻拍誘発性心筋症と診断。頻拍発作のコントロールには難渋したもののフレカイニドにより発作の抑制が得られ、心機能は徐々に回復した。非発作時心電図で間欠的にΔ波を認め、間欠型WPW症候群と診断した。
(35-38)16:15-16:55 座長 遠藤 雄策(浜松市発達医療総合福祉センター 小児科)
35 Rhythmic movement disorderの1例
静岡てんかん・神経医療センター 小児科
○大谷英之(おおたに ひでゆき)、森達夫、束本和紀、大星大観、渡辺陽和、吉富晋作、山口解冬、那須裕郷、池田浩子、今井克美、重松秀夫、高橋幸利
Rhythmic movement disorder(RMD)は入眠直前あるいは睡眠中に認められる、不随意で反復する運動により特徴づけられる障害である。症例は7歳男児。家族歴、既往歴に特記なし。ADHDを合併している。生後10カ月時より入眠時および睡眠中に、頭を枕や布団に反復して打ち付ける数秒から数分間持続する動作が出現し、現在まで持続している。精査目的で当院を受診し、長時間脳波ビデオ同時記録により上記と診断した。今回RMDの典型例を経験したので文献的考察を加え報告する。
36 MECP2重複症候群の一例
浜松医科大学小児科1)、浜松市発達医療総合福祉センター2)
○朝比奈美輝(あさひなみき)1)、宮城佳史1)、石垣英俊1)、遠藤雄策2)、松林朋子1)、平野浩一2)、福田冬季子1)、緒方勤1)
MECP2変異によるMeCP2蛋白の機能障害によりレット症候群が発症するが、近年MECP2重複により重度知的障害が発症する事が明らかになっている。我々はMECP2重複症候群の1例を経験したので報告する。症例は重度精神遅滞3歳男児。2歳6か月独歩獲得。有意語認めず。てんかんなし。アレイCGHでMECP2を含むXp28に重複を認めた。発語のない重度知的障害を有する男児では本疾患も考慮する必要がある。
37 発達性読み書き障害の15例
静岡医療福祉センター小児神経科1)、静岡県立こども病院こころの診療科2)
〇末田慶太朗(すえだ けいたろう)1)2)、前田卿子1)、山崎透2)
発達性読み書き障害は、知能が正常範囲で読み書きの習得困難が見られる状態である。近年、診断のための実践ガイドラインが作成され小児科医で診断可能となった。筆頭演者が診断した発達読み書き障害15人の臨床的特徴についてまとめた。読み書き障害は、時に児や親の問題にされることがあり、また、不登校や虐待につながることもある。学習困難は自己肯定感・QOLの低下につながるとの報告もあり、早期の診断支援が重要である。
38 1歳半、3歳児健診を通過した発達障害例の検討
浜松市発達医療総合福祉センター 小児科
○鈴木輝彦(すずき てるひこ)、遠藤雄策、平野浩一
発達障害の早期発見の機会として、乳幼児健診は重要な場である。今回、我々は、3歳児健診まで指摘されず通過した発達障害児の検討を行った。3歳児健診まで指摘を受けなかった例では、IQやDQが高く、言語の遅れの少ない症例が多かった。診断に至る医療機関受診時の主訴は、集団適応困難が主であった。乳幼児健診では、集団適応などの社会性にも注意し、高機能の発達障害の早期発見・対応につなげる必要があると考えられた。